片恋シンデレラ～愛のない結婚は蜜の味～
「いただきます」

栗原さんはコーヒーの入ったマグを持って私の前の椅子に腰を下ろすと、一口だけ飲んで話し掛けて来た。


「俺の手掛けたシナリオの感想はどうだった？」

初めて手掛けた仕事だからか栗原さんは自信なさげにだった。人気ゲームから派生し、シリーズ化したゲームだし、プレッシャーが凄いんだろう。


「ツボは押してるけど・・・」


「押してるけど・・・？」

栗原さんは私の次の言葉を待っていた。


「こんなシチュエーションはどうかと言う提案、このセリフはこんな風にした方がいいと思う箇所は修正していますから…後で確認しといて下さい」


「あ…分かった」

「ベストセラー作家の栗原さんに厚かましいと思いながらもこのシリーズ私ダイスキだから・・・」


「誰が一番スキなの？」

「弁護士の星苑さん」

「星苑さんか・・・クールだけど実は情熱的なバリトンボイスの星苑兵馬だろ？」


「そう」
私は栗原さんのお手製のカレーライスを食べながら星苑さんのキャラ語りを永遠とした。栗原さんは嫌な顔一つせず、向きに話をする私を軽蔑せずに真剣に訊いてくれた。元々彼が訊き上手だし、作家さん、二次元世界に全く偏見はない。

「久保川は冬也と星苑さんどっちがスキなの？」

「えっ！？あ・・・星苑さんは二次元の人、冬也は三次元の人よ。比べる方が間違ってる」

「間違ってないと思うけど・・・」

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