片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
俺達が言い合っている間にイタリアンレストランに到着した。


雨天ならテラス席は開放されないが、今日は曇り空なので隅田川のせせらぎを眺めながら4人でランチコースを楽しむ。


「副社長、運転はどうするんですか?」

「小陽が運転するからいいんだよ」

奥様はオレンジジュース、俺達は副社長が選んだワインでカンパイした。


「緑川、挙式はいつだ?」

「それがまだ…具体的には決まっていないと言いますか・・・」
出来れば、派手な挙式披露宴はしたくなく、入籍だけで済ませたいのが本音で。


「決まってないのか。でも、次期家元だから、きっと派手にするんだろうなぁ」

「それよりも夏芽お前、昨日はどんな花を生けたんだ?」

俺は結婚の話題を何とか逸らそうと夏芽の昨日のレッスンを話を訊いた。


「え、あ…何の花だったかな?」


「お前、昨日生けた花の名前、覚えてないのか?それで、本気で華道する気あるのか?」

「昨日の生けた花は形は体用型Aで花材はリアトリス、カーネーション、ヒベリクムです」

「ふうん。まぁ、初心者には無難な感じの花材だな」


カーネーションはどんな花か知っているが、他の二つの花は知らない。

私は小陽さんの咄嗟の気転に救われた。






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