〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。

一分一秒が、こんなに長いものかと...康介のところに行った時とは明らかに違う焦りとうろたえ。
帰って来ないとか、そんな事の前に、やっぱり私...、なんて言い始めたらどうしようかとか、とにかく、京の言葉を信じていても、目茶苦茶不安だった。

京は、澤村京になりたいと言った。よく考えて、後悔しないと言った。

それは確約ではない。...よな。
まだ、言葉のみのモノだ。

例えば、...京が吉澤さんの元へ戻るとして。
状況が変われば、言った言わないの、そんなレベルだ。
まだ、婚姻届の提出はしていないのだから。


...もう、こんな時間か。
...戻らないかも知れないな。

吉澤さんは懐の深い愛で見守っているんだ。
そんな彼の本心を知ってしまったら...。

彼の元へ戻っても責められはしない。
それが京の幸せなら、俺だって、京の幸せを願う。

綺麗事では無い。
自分に気の無い者を無理に引き止めて、誰が幸せになると言うんだ。
どちらも不幸だ。

はぁ、もうそろそろ帰る手段も無くなって来るぞ。タクシー、掴まるかな。

花火を中継してる時間帯にテレビなんか観てたら、もしかしたら映り込むんじゃないだろうかとか、訳の解らない事さえ過ぎった。

手なんか繋いじゃって、...もしかしたら、打ち上がると同時に、キスなんかしたりして...。
寒い中、そんなに長くは見ていられないだろう。
暖を取りにどこかに入るだろう。
...。

まさかな。

いくらなんでも...いやいや、...いや、それは無い...と信じたい。

あー、帰って来なければそれも、...そうなのか?
負の妄想が止まらなかった。

京、帰って来い。
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