それを恋とは呼ばないで
1:恋とは?

プロローグ


家から少し離れた女子校に入学して、気がつけば早1年が経とうとしている。

私、浜野天音(はまのあまね)は焦っていた。
「実にまずいよ、あべくん。」
斜め前に座っている"あべ"こと安部千尋(あべちひろ)は面倒臭そうに振り向いた。
「何がだね、はまのくん。」
「華のJKになってからもう直ぐ1年になるのに私達未だに…「皆まで言うな。」
そう言って立ち上がったあべは私の前の席に移動してくる。
「はぁ、彼氏、欲しい。」
切実な私の叫びにあべは薄ら笑いを浮かべる。
「あれ?あまね、この間のカフェの店員さんはどうなったの?」
うん、カフェの店員…さん?
私が困っているのを見てあべは少し呆れたように言葉を続けた。
「ほら、惚れたー完全に惚れたー恋だわこれが恋か!!!とか騒いでたじゃん。」
わざとらしく腕を振り声を高くするあべに私はムスッとする。
おいおい、それが私のモノマネのつもりか。
「あー、忘れてた。えへへへ。」
あべはやれやれと首を振りチャイムの音と同時に席に戻った。

そう、私、浜野天音は未だかつて恋をしたことがない超ピュアピュア女子校生なのだ。
まあ、日に日に妄想の力だけは進化していってるのだが。
そんな私は男性への免疫が無すぎて、どんな男性でも少し関われば"好きかも…"となってしまう厄介な特徴を持っている。

でも、でもでもでも、こんな私でも恋がしたい!
少女漫画の主人公みたいにイケメンにチヤホヤされたい!!!


えっ、でも待てよ。恋ってどうやって落ちるものなの……?!


「浜野ー、生きてるかー?」
我が校ではアイドルのような人気を誇る49歳。通称王爺様(おうじぃさま)の声で私は現実へ引き戻され、午後の日差しを浴びながらノートの隅にそっと"恋とは…?"と小さく綴った。
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