48歳のお嬢様
父親同志の約束
50代から70代のお兄様お姉様の集まりである理事会が、
だらだらとした雰囲気の中、なんとか終了した。


私が一番若輩者。
少し前まであった派閥争いは、
去年とおととし、父の弟と妹が相次いで亡くなり、いとこの代に代わったことで、
お互いに勢力が弱まり今は落ち着いている。

私が独身なのでいつも、
『次の理事長は?北條路家次期当主は?』
と詰め寄られる。
その毎回の質問は、学園の運営の話が終ってからにして頂きたい。

私が理事長を引退したあとは、たぶん亡くなった叔父さんの長男の息子あたりが引き継ぐのでは?と思うけど。
意欲をもって、やりたい人がやってくれれば血縁がなくてもいいと考えている。

北條路家当主は昔からの継承権の順番で良いんじゃないの?
人間の欲のぶつかり合いを見るのはもううんざりよ。


今はまだ私、この学園に携わっていたいの。
勝手に辞めさせないで。


若輩者でも理事長だし本家を継いだ当主なので、
申し訳ないけど
『今の事をまず話そう?ゴチャゴチャ言うなら引っ込んでて!』
……な心境なのだ。





「はぁ……疲れたわね、和樹。
お昼、どこで何を食べる?」


「お疲れ様でございました。
午後1時から理事長室に来客の予定ですので、近場で済ませましょう」


「え?お客様はどちら様だったかしら?
ごめんなさいね。
私ったら、全部あなたに任せっきりで本当に何も把握してないわね」


「いえ、故意にお伝え致しませんでした。
私の身内ですので…。
父が。久し振りにご挨拶に…」


「えー?直樹さんがいらっしゃるの?
どうして教えてくれなかったのよ」


「……申し訳ございません。
父は私に話があるのです。
それで、ご無沙汰しているお嬢様にもご挨拶を、と…。
べ、別に、たいした話でも無いようですし……。
……そうそう、お昼は近場の……お嬢様のお好きな、蕎麦懐石に致しましょう?」


あやしい。
何かを隠している。
和樹が挙動不審になることなんか、そうそう無いのだ。


でも、蕎麦懐石につられて、それ以上突っ込むことなく聞き流してしまった。

和樹の、私の操縦技術は他の誰にも真似の出来ない秘技なのだ……。





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