48歳のお嬢様
応接室に入った二人は、本当に久しぶりに親子の時間が持てたのだけれど……。


「父さん、ひどいじゃないですか。
お嬢様にはそのような気など無いのに、突然話を振って貰っては困ります」


「いやいや、もう35年も一緒に居るのに少しも気がないというのは、よほどそちらの方面に疎いお方なのだ。
少しはヒントを差し上げて、気付いて頂かなくては。
ご自分のお気持ちにも、な」


「お嬢様は、父さんが考えているような気持ちは、お持ちでは無いですよ」


「おいおい、お前まで……。
去年の法事にお見えになっていた分家の方々でさえ、お気付きになってな、
わしに問うていらっしゃったぞ?
『息子さんは実質ご当主の婿殿でいらっしゃるのでしょう?
いつまでも内縁のままというのはご当主として如何なものか?』とな」


「なっ……、そ、それで父さんは何と答えたのですか?」


「そりゃ、勝手に色々言えんだろう?
そのような事実はございません、ご当主と執事以上の事はございません、とな」


「はぁ……。分家のどこの誰だ?まったく」


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