異世界
~第1章~ 記憶
人間がこの地に降りてきて殺害したあの頃から約100年が経った。
また、この地に新たな生き物が産まれた。人のような体で自分の姿を隠していた偽人とは違った、自分の姿なまま生きる『偽獣(ぎじゅう)』が誕生した。これは、約90年前の事。

そんな時から約100年……。人間殺害から。
そして、私が産まれた。
偽人と偽獣の間の子。蔑(さげす)まれる『人獣(じんじゅう)』として。
『人獣』は『偽人』と『偽獣』の二つの力を持ち、それは『偽人』と『偽獣』の倍だと。
その代償として産まれる可能性が低く、産み親は力尽き死んでしまう。

私は、父に育てられた。
だけど、それもつかの間……
父は殺された。2歳という幼い私を置いて一足先に。
私を蔑む『偽人』と『偽獣』に。父が犠牲となった。私を守る為に。

私は、彼らに見られないよう林に隠されていた。でも、心の好奇心で父が殺されるところを見た。幼すぎた私には悲しみが無かった。ただ、父が目の前で倒れて行く姿に疑問を持って。
しばらくして、父が死んだ事を確認した奴らは姿を消した。
私はその時何を思ったのだろうか。
私は父を眺め笑った。
初めての死を見て。
そして、背後から声が聞こえた。

それが私の人生を変える瞬間だった。
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