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ちゃっちゃと手際よく料理する宝生さんを横目に、私はまだ半分夢見心地のままソファーにいた。


フライパンからジュー、と美味しそうな音がして、いい匂いが部屋の中に立ち込める。
それに釣られるかのように、私のお腹もグーなんて恥ずかしい音を奏でた。


あの後、無言で私をソファーに置き去りにした彼は鞄をダイニングテーブルに置き、そのままキッチンへ向かった。
私は彼の後を追おうと思ったが、なんとなく行きずらくてこの場に留まっていた。


こんな風にまじまじと彼の料理する姿を見るのは初めてで、なぜか落ち着かない。やっぱり、見てるだけって気が引けるからかな?


そんなこんなでいつの間にやら料理は出来上がり、「棗ちゃん、出来たよ」と言われた時にはもうすでにテーブルの上には用意されていた。


「いただきます」と手を合わせふたりで夕食を囲む。さっきの出来事のせいか、いつもよりも口数は少ない。


ふたり分のチャーハンを手早く作った宝生さんは、ビールを呑みながら黙々と食べている。


私は気まずいこの雰囲気をなんとか変えたくて会話の糸口を探していた。

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