上司がキス魔で困ります
会社から二十分、改札から直結する我が家のマンションに迎えなどいらないのだが、言って聞くような兄ではないので受け入れるしかない。
改札を出ると、柱にもたれてスマホを凝視している長身の男が立っていた。
明るい茶色の髪に甘く端正で、華やかな顔立ち。なんてことないシャツとデニム姿が外国人モデルのように決まっている。
「ちょっと、あの人めちゃくちゃカッコ良くない?」
「待ち合わせかな……彼女さん羨ましすぎ」
同じ駅で降りたOLさん二人がヒソヒソしていたが、あまりにも迫力満点で声を掛けづらいのか、名残惜しそうに通り過ぎて行った。
残念だがあれが私の二つ年上の兄の春川蘭(はるかわらん)である。
「蘭ちゃん」
周囲を確認しつつ声をかけると、兄はハッとしたように顔を上げ、めちゃくちゃ嬉しそうな笑顔で駆け寄ってきた。