The Pacific War ~過去との遭遇~
第3章 未来を知るということ
俺が大和に落下してからおよそ1時間後、俺は詳細を話すために士官室へ行くことになった。

俺はあまり乗り気では無かった。未来を知ったとしても、前線で戦う軍人が逃げ出せるはずもない。負けると分かっていて戦うことなどできないのだ。

ドアを開けて士官室に入ると、そこにいる全員が険しい顔をして座っていた。
この軍人達は言わば大和の、いや日本海軍の頭脳である。

俺が何をしていいか分からず棒立ちしていると、山本五十六連合艦隊司令長官が入ってきた。

「何をしておる?座らんと話もできんだろう」
と山本長官が言った。
俺は長官の隣の席に座った。

「ところで、今は昭和何年の何月何日ですか?」と長官に尋ねた。

「今は1942年の4月20日だよ」
タイムスリップする前と同じ日付である。103年前だが。

すると今度は長官が尋ねてきた。
「君、名前は何と言う?」

「吉田勇樹です。大吉の吉に、田んぼの田に、勇気の勇に、樹木の樹です」

「年齢は?」

「16です」

そう答えた後、しばらく無言だったのだが、長官が
「皆、よく聞いてくれ。この吉田君は、100年後の未来から来たそうだ。これから大日本帝国の運命について話してくれる。聞き逃さないように」
と言った。

俺の話を聞いてこの軍人達は何と言うだろうか。反発するに違いない。だが話さねばなるまい。
俺はそう思いながら、話し始めた。

「これから私が話すことは、全て実話です。私の話を聞いて士気が下がるようなら、お話しすることはできません。それでも良いでしょうか?」
俺の問いに対して、軍人達がうなずいた。迷うことは無い。全てを話そう。

「大日本帝国は、1945年8月15日、軍民合わせて約200万人の犠牲を払い、連合国軍に無条件降伏します」
そう言い終わった瞬間、軍人達がざわめき始めた。



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