奥さんの身柄、確保!
その直後ーー

バタンッ。

部屋のドアが荒々しく開いた。

「…チックショウ‼……テメエっ」

 私を抱く柿田巡査の背後に、キラリと光る刃物の光。
 何か訳のわからない叫び声を上げ、男がそれを振り回しながら突進してくる。

「キャアアアアっ‼」
 叫んだ私を、柿田さんの大きな背中が庇った。

「この…よくもタブらかしやがって…ボクの…」
「柿田さんっ、危ないっ‼」

 男がナイフを振りかざす。

 私は思わず目を閉じた。

 ガタガタっ、大きな音、争う声。

 叫び声。

 そして終わりに、どちらかの憐れっぽい悲鳴。


 …最後にニッと笑った柿田巡査の顔が、亡きヒトの最後の笑顔と重なって瞼に浮かぶ。


 イヤ、あなたまでそんな……絶対にイヤ‼ 


 あたりはしん…と静まった。

 恐る恐る目を開け、私はホッと胸を撫で下ろす。

 柿田巡査が黒のパーカーの男に跨がって、後ろ手に取り押さえていたからだ。
 格闘の末とみえ、犯人の男はヒィヒィと憐れっぽい嗚咽を漏らしていた。

 
< 20 / 30 >

この作品をシェア

pagetop