神坂君と難あり教室
皆仲良く!
「あなたの特技はなんですか?」

僕は、その質問に答えることができない。
理由は、謙遜とかではなく、自分には何もないからだ。
ないものを答えることは、出来ない。

皆は簡単に答えることができるだろう。
野球、サッカー、剣道、などなどだ。
僕になくて、皆にあるもの・・・それは。
そのときだ、僕を名前を呼ぶ声が聞こえた。

「向井 凪!、私の授業で寝るとはなかなか根性があるじゃないか?、ん?」
「か、楓先生・・・ごめんなさい」
「んまぁ、これからは気を付けるんだぞー?」

楓先生は僕らの担任の先生だ。
一年生からの2年間、僕らに勉強を教えてくれている。

僕らが学校生活を送っている中学校は、偏差値69の超進学校だ。
だが、それは1~4組の話であり、僕達がいる5組は話が違う。

5組にいる生徒は、成績不良、運動音痴、素行不良、非常識な生徒の集まりだ。
そのせいもあり、クラスの雰囲気は最悪だ。

三年生になり、誰も教室で笑い声を聞いたことがない。
そればかりか、朝の挨拶目ないのだから。
聞こえてくるのは、ため息ばかり、僕は中学最後の一年を諦めようと思った。

いつも通り授業を受け、いつも通り帰宅をし、いつも通り登校する。
そしていつも通り、楓先生の出欠をとる声が聞こえて・・・

「今日から、このクラスに新しい仲間ができるぞ!」

新しい仲間?
クラスの誰もが、興味がない。
誰が来ようがなにも変わらないことが、分かっているから。

「おーい!、入ってきていいぞ」

教室のドアを開け、銀色の髪の毛が腰ぐらいまで伸びている美少女が入ってきた。

「よーし、じゃあ、自己紹介してくれ」
転入生の頭をぽんぽんする楓先生。
「バルサ・・・私の名前は、神坂 類です。」
透き通るようなきれいな声。
そして可愛らしいなま・・・え?
僕の思考が止まってしまった。


「はじめまして、神坂 類です。こうみえて性別は男なので、よろしくお願いします」


これが、神坂君との初めての出合いだった。「神坂 類です。よろしくお願いします。」

誰も神坂君の言葉に返事をしない。
拍手もしなければ、視線もあわせない。
もし僕が、神坂君の立場なら、かなりの確率で泣きたい気分になるだろう。

「おー?、皆さん緊張しているのですね。その気持ちわかります。」
「それじゃ神坂は、凪の後ろがあいてるな?、その席に座ってくれ」
「了解しました。」

神坂君がこの教室に絶望するまで、どれくらいかかるだろう?
おそらく1週間ぐらいかな。

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