ティアラ
明日にして、と言うつもりだった。

だけど、その言葉はのどに詰まったままで、声にはできなかった。

目の前に現れた、ひとりの男。

携帯電話を耳に当てたままのあたしは、凍りついた状態で立ち尽くす。

「太一がね、さっきあんたと別れたときに、その森本ってやつを見かけてるの!!

カメラを持って、あんたの後をつけてたらしいのよ!!

人がごった返していたから追いかけることもできなくて、携帯でそのことを知らせようと思ったらしいんだけど、

あんた、太一の電話に出なかったでしょ!?」

黙ってその話を聞いているあたしは、目の前にいる男が誰なのか理解できた。

……森本だ。
< 135 / 555 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop