ティアラ
彼女は苦笑いを浮かべながら、髪の毛をクシャッと握る。

この前、彼女は嬉しそうに彼氏のことを話していた。

その姿は、羨ましくなるほど幸せそうで……。

「そっか」

何も知らない状態なら、あたしはきっと「大丈夫だよ」と励ましていただろう。

けれど、「弥生ちゃんの彼氏は、昨日、何をしていたか」を知っているだけに、何も言ってあげれない。

「あ、暗くなっちゃいましたね。ごめんなさい。……そういえば、兄とは順調ですか?」

本当はまだ悲しいはずなのに、弥生ちゃんはあたしのことを気にかけてくる。

今は人の恋愛の話なんてしたくないはずなのに……。

「あー、えっと……」

そういや、弥生ちゃんと美緒ちゃんは、あたしと深町が付き合っていると思い込んでるんだよね。
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