窓ぎわ橙の見える席で


わざわざチェーン付きのミニバッグを持ってきて大正解のてらみは、満面の笑みでワインと料理を取り分けたお皿をそれぞれ両手に持って得意げに言った。


「ところでつぐみ。約束したじゃない。私まだ変人くんに会ってないわよ?」

「あ、あぁ、ごめん。どこかにはいると思うんだけど……。これだけ人がいるし見つからないよ」

「連絡してみてよ」


グイグイ要求を押し付けてくる彼女のその性格には慣れっこだ。
これには何度も付き合ってきたし、昔からなのでなんとも思わない。


会話の流れで「変人くん」というワードを聞きつけた大輝くんが、眉をひそめて首をかしげた。


「変人くん?……それって何だっけ?聞いたことあるような……」

「変人くんは変人くんよ!覚えてない?高校の時にいたでしょ?大輝くんは同じクラスになったことないのかな?」


私の代わりにてらみが答えるが、彼はよく分かっていない様子。
大輝くんは隣町から高校に通っていたから小学校も中学校も私たちとは違う。
高校で辺見くんと交流が無ければ知る由もないのだ。


「つぐみの想い人は、その変人くんなのよ〜」

「違うってば!」


酔っ払ったてらみには私の抗議など聞こえていない。
上機嫌でワインを口に運んでいる。
私は戸惑っている大輝くんに「違うからね!断じて違うから!」と、聞かれてもいないのに言い訳をしていた。


その時だった。


「宮間さん」


と、最近はほぼ毎日聞いている、私の名前を呼ぶ声が耳に入った。
ほわんとしていて、耳障りのいい低い声。


ぐるっとひと回り周囲を確認したら、会場の大きな扉の前に辺見くんがいた。


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