窓ぎわ橙の見える席で


そうか、じゃあな。
なーんて言われてそのままバイバイだと思っていたら。
大輝くんは友達のひとりに


「ごめん、俺帰るわ」


と断りを入れて私の背中に手を回してきた。


「もう少しつぐみと話したかったから、帰りながら話そうよ」

「で、でもいいの?みんな久しぶりに会ったんじゃ……」

「いいんだ」


平静を装っていますが、私は非常に動揺しております。
だってなんかちょっと意味もなく背中を触られているから。
大輝くんはお酒を飲みすぎたのか、けっこう酔っているようにも見えた。


「何で帰るの?」

「あ、バスで帰るつもりで……」

「駅前のバスターミナルか」


おずおずと駅の方角を指差したら、その手を大輝くんに掴まれた。
ビックリして声も出ない。


「ちょっと遠回りしない?」


妙に意思の強そうな目をした彼は、なんとなく何かを企んでいるようにも見える。
気のせいだと言い聞かせて、そっと彼の手から逃れるようにして「分かった」と返事をした。
でもどうしても背中に回した手はまとわりついて離れなかった。



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