窓ぎわ橙の見える席で


「ふざんじゃないわよ、私をナメないで」


藤枝さんは空になったペットボトルをカランと地面に放り投げると、「行くわよ!」と大輝くんを引っ張った。
彼は申し訳なさそうに肩をすくめて、彼女に促されるままについていった。
その後ろ姿の情けなさと言ったらない。
元カレのあんな姿を見たくはなかった。


取り残されたのはピーチティーでびしょ濡れになった私と辺見くん。
さすがに周りの人たちの注目を集めていた。


何が悲しくてホテル街の真ん中でピーチティーまみれにならなきゃいけないの。
お気に入りのワンピースもびしょびしょだし、砂糖が入っているからベタベタする。


「この紅茶、いい匂いがするね。しかも甘い」


手で顔をこすった辺見くんが、唇をペロッと舐めて味を確認している。
どうしてこんな時でも彼はこんなにマイペースなのだろう。凄すぎる神経の持ち主だ。


「辺見くん……、ごめん」

「なんで謝るの?むしろあの人を焚きつけて逆上させた僕の責任だよ」


私の謝罪など聞く耳も持たずに、辺見くんは自分の服を見下ろして苦笑いした。


「また服買わなきゃ」

「か、買い物なら付き合うからっ」

「うん、その時はよろしくね。………………あ、宮間さん、服が濡れて……」


彼の視線が、私の顔から下に移る。
どう見ても胸元をガン見しているので、急いで自分の体を抱きかかえるようにして隠した。


「ど、どこ見てんのよっ」

「だって下着が透けてるんだもん」

「ええっ!?」


驚いて私も自分の体を見下ろす。
白と黒のツートーンカラーのノースリーブのワンピース。上半身は白で、胸下から黒に切り替わっているのだけれど。
ピーチティーがしっとりと染み込んで、白い部分すなわち胸元が完全に透けてしまっていた。
水色のブラが見える。


「変態っ!変態っ!!」

「不可抗力だよ、僕のせいじゃないよ」

「辺見くんの変態っ!!」












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