窓ぎわ橙の見える席で


━━━━━うげ。高校のアルバムを読みふけっていたらもうこんな時間。


部屋の木製の置時計で時間を見て、日付が変わっていることに気がついた。
このままでは明日の朝、起きるのがしんどくなってしまう。


パタンとアルバムを閉じて、辺見くんよりもハリガネムシのことを思い出してしまって気分が悪くなった。
アレは本当に衝撃的だった。
忘れていたのに辺見くんに再会したせいで思い出しちゃったじゃない。
間違ってもネットとかで調べちゃダメなやつ!


ブンブンブンッと頭を振ってハリガネムシを追い払い、辺見くんのこともついでに追い払っておいた。
ヤツはきっとまたそのうち食堂に現れて、昔のようにヘラッと笑って話しかけてくるんだ。彼はそういう人だ。


取り出したアルバムは全てダンボール箱に詰め込んで、元あった場所に戻す。
その代わりに本棚の中からリングノートを何冊か引き出した。


そのリングノートは、専門学校時代に書き溜めていたレシピブックだった。
お菓子は専門外だったから2冊くらいしか無いはず。
中身を確認して、目的のものを見つけたのでそれらをベッドの上にポンと置いた。


変人くん改め辺見くんの再会を、私は別に喜んでなどいなかった。
地元に帰ってきたのだから同級生に再会することなど分かっていたし、彼の場合はその存在を忘れかけていただけのこと。
あの頃興味があったからといって、今もそうかと言われるとそれはまず無い。


そんなことよりも、来週からのデザートをしっかり考案しておかないと。
仕事、仕事っと。











12年振りの同級生との再会。
その始まりは、どこにもロマンチックなものなど感じなかった。


それはきっと、辺見くんも同じ。










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