窓ぎわ橙の見える席で


別に私だって恋愛したくないわけじゃない。
好きな人がいたら働くのだってさらに楽しくなるだろうし、どうやって連絡しよう、デートに誘おう、ってやきもきするのもいいなぁって思う。


だけどてらみに言われて分かったのだ。
今までそんな思いをしたことが無かったな、と。
恋の駆け引きみたいなものをやったことがない。
好きで好きでどうしようもなくて、切なくなるくらい胸を焦がすなんてことも経験が無い。


……もしかして私ってかなりドライなんじゃないだろうか。


心から好きだと思える相手が現れる日なんて来るのかな。
三十路目前で遅いかもしれないけど、こんな私にもどうしようもなく好きな相手が見つかるのかな。
頑張りたいけど、どう頑張ればいいのかも分からないし。結局回り回って今の自分に落ち着いてしまいそうだ。






てらみの言う通り、私は辺見くんに興味がある。
高校時代のそれは間違いないけれど、たぶん、今も同じ……らしい。


ちょっとした言動とか仕草とか、予想もつかないことをしそうで目が離せない。
話すことがそのへんにいる男の人とはちょっと外れているのが不思議で、もっと話を聞きたいなと思ってしまうのだ。
正直、話しやすいし話していて楽しい。


どうやらそれは現在進行形らしい。


昔、てらみが言ってたみたいに、辺見くんを男として捉えているというよりは一種のキャラクター的存在として見ていると言った方が正しいかもしれない。


彼のことが、少しだけ気になる。
それは認めてやろう。












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