幸せ探し
愛する時
お風呂場から司の鼻歌が聞こえてくる。
それだけで私は笑顔になれた。
お疲れ様と言ってビールを渡すといつも通り律儀にありがとうと笑って、私の頭を撫でてくれる。
お昼から作ったシチューを美味しいと食べながら、今日の仕事の話を聞かせてくれる。
司は子どもの頃から裕福だったけれど、両親は家を空けることが多かったようで、幼い頃の淋しさが今も闇となって残っているような部分がある。
だから、私は時に母性本能に従うようにして司を愛したくなる。
抱きしめて、抱きしめられて、温度に溶けたくなるのだ。
いつか、溝にもわだかまりにも思える靄が消えるようにと願って。
司をベッドに誘うと、司は必ずそれに応じてくれる。
広い肩幅と適度に割れた腹筋、少し太い腕の中へ、私は自ら身体をうずめる。
司の体温に触れて泣きそうになる自分を堪えて、私は司を力いっぱい抱きしめる。
指を絡め合うとさらに私の胸は波打つ。
理由なんてものは最初からない。
司が、大好きだ。
無条件に、他の誰でもなく。
食事を作っても、洗濯をしても、掃除をしても、結婚指輪が明かりに反射して光る度、それはこの世のどんなものより輝いているようにさえ思えた。
あなたと一生を共にできる証なのだから。
愛する人と毎日を隣で過ごしているのに、なにかを計算してから笑ったり泣いたりする自分がおかしかった。
< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop