私は、エレベーターで恋に落ちる
「あなたって訴えられないために、
わざわざこんな小細工して、
弁護士に頼もうなんて、つまらない事考えてたのね」

「考えたのは、俺じゃないぞ。
それに、君の話は事実と違う。
訴えられたくないために、キスしたんじゃない。
キスは、したかったからしたまでだ。
小細工するためじゃない」

「違いなんてないでしょ?」

「自分の気持ちの為なら大きな違いだ。
俺は、そんなつまらない小細工するほど小さな男じゃない」
分からせようとして、彼が腕をつかんでくる。

彼の腕を振りほどこうとして、体をねじる。

「どっちでもいいわ。
こんなキス、犬に嚙まれたと思うから。
それより、さっさと用事を済ませましょう」

「悪かった。この写真を弁護士が見て、使えるって連絡してきただけだ。
俺がそうしたかったわけじゃないし、この写真を使うつもりもない」

「私、こんなくだらないことで、人を訴えたりしませんから、ご安心ください。
作業、早く済ませましょう。
付き合うのは、これで最後?
朝、昼、晩と三回とればいいでしょう?
そうすれば、二度とあなたの顔なんか見なくてすむでしょう?」

思った以上に傷ついていた。


キスしたかっただけの人が、角度まで気にして写真なんか撮るかって言いたい!

「そういうつもりじゃなかった。君のこと傷つけてたら、ごめん」

こんなにがっかりさせられたのは、初めてだった。

立ち直れないくらいに。

戸田さんの事なんか吹っ飛んでなくなってしまうくらい、傷ついてる。
< 89 / 155 >

この作品をシェア

pagetop