しましまの恋、甘いジレンマ。
日曜日はふたりで


休日を異性と二人きりで出かけるなんて学生時代以来かも。
働き出してからは主に飲み会、出張、会議でしか接点がない。
それも皆さん既婚者だったりまだまだ遊びたい奴だったり。

志真だって全く異性を意識をしない訳ではないから
化粧も服装もしっかりと可愛い系でまとめて行こうと思った。

でもすぐにやめる。

今は浮かれている場合ではないし、
どうせ相手だってそんなつもりじゃないのだから。

「…馬鹿みたいだって思われるのは嫌だしな」

どうあがいたっていきなり美人に変身出来るワケじゃない、
無理をして知冬に小馬鹿にされるのがオチ。
結局普段と変わらない恰好で、メイクも薄めにして1階へおりた。

「……」
「あ、あの。準備出来ました。何時でも大丈夫です」

リビングに入ると彼はぼんやりと庭を眺めていて
志真が呼びかけると振り返る。

「……」
「……」

あれ、なんだろう。返事がない。
こういう時はたいてい何かしらの不満がある時だ。
何時もと違う恰好ではあるけど、そんな大差はないしメイクだって。

やっぱり「何勘違いして張り切ってんだコイツきもい」とか思われてる?

「……あの」
「だ、大丈夫ですよ!?全然、全然そういうつもりじゃないから!」
「え?」
「ぜんぜん。ぜんぜん」

全然何言ってんのか自分でも分からない。

「…山田さん、公務員ですよね」
「は、はい!あ、でも端くれですけど」
「日本の公務員は安定した給料と賞与、福利厚生が売りだと聞いています」
「そ、そうですね。…あんまり他は知らないですけど」

なに?これ、まずそこから駄目だし?

「だったらデートの時に着る服くらい買えないんですか?」
「……」

え。え?

「そんな普段と同じようなやる気のない恰好じゃ出かける気にもならない」
「……あの、その、…すいません」
「他は無いんですか?それが貴方の本気?冗談ですよね?」
「……冗談です」
「じゃあお願いします。時間が勿体無いので」
「はい…」

ナニコレ?何でこんな事で朝から怒られてるの私???

いったん部屋に戻りさっき却下した服を着直してメイクももう少し丁寧に。
でもこれで「何の冗談?」と言われたら後が無い。
最悪もう行くの辞める!とか言われたらどうしよう、後味が悪すぎる。
志真は恐る恐る階段をおりて、同じ場所に居た知冬にお伺いを立てる。

「……まあ、及第点としましょうか。行きましょう」
「は、はい」

知冬はじーっと志真を見つめそう言った。
よかった、何とかクリアしたらしい。戸締まりを確認してから家を出る。
ここまでが長すぎじゃないでしょうか、とは言えなかった。

「駐車場借りられたんですね」
「必要経費です」
「折半?」
「いいえ。貴方は運転をしないから、…なんなら運賃を取りましょうか?」
「勘弁して下さい」

< 29 / 67 >

この作品をシェア

pagetop