次期社長の甘い求婚
それでも相手はもう来ているかもしれない……と思うと、走るしかなかった。


あの日から三年の月日が流れた。

私は住み慣れた東京を離れ、都会とは程遠い地方の田舎町に引っ越してきた。


「あら、美月ちゃんおはよう。どうしたの? そんなに慌てて」

「あっ、おはようございます! ちょっと遅刻しそうで……」


足を止めるも少しずつ前へと進む私を見て、声を掛けてくれたご近所さんはクスリと笑みを漏らした。


「気を付けてね」

「ありがとうございますっ」


今ではすっかり生活にも慣れ、ご近所に顔見知りもできるほどだ。

東京での生活の中では、考えられないことだった。


息が途切れ途切れになりながらも、最寄り駅に到着しすぐに周囲を見回すと、私の姿を見つけた人物が嬉しそうに声を上げた。


「美月っ!!」
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