次期社長の甘い求婚
「大丈夫でしたか?」


そっとタオルを差し出すと、彼は「へへへ、やられちゃったよ」と言いながら顔を綻ばせた。


出掛ける前はピシッとスーツを着こなして様になっていたというのに、雨に濡れてはその姿は見当たらない。


「あぁ、鈴木主任ってば眼鏡まで濡れていますよ。拭かないと」

「ああっ! 本当だ」


そしてこういうところは相変わらずだったりする。
つい昔のように気になってしまう。


そんな会話を繰り広げていると、デスクに座ったまま松田さんはニヤニヤと、何か言いたそうに私と彼を見つめている。


いつもこうだ。
私と鈴木主任が話をしているだけで松田さんを始め、みんなはニヤニヤしながら私達を見つめ、からかってくる。


「……なんですか? 松田さん。その目は」

「いやね、ふたりを見ていると夫婦みたいだなぁと思うわけよ」


いつものようにはいかないぞ。と言わんばかりに先手を打つも意味はなかったようで、いつもの如くからかわれてしまった。


「まっ、松田さん!!」

そしてそれに対し、鈴木主任はこうやって毎回顔を赤らめ、声を荒げるものだからますますみんな、面白がってしまうのだ。
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