次期社長の甘い求婚
「さっきも言ったけど、今度はふたりで行こうね。……俺がいつも一番お世話になっているのは、小野寺さんだし」

「鈴木主任……」


思わず足が止まってしまう。


なにそれ。


「小野寺さん?」

こっちの事情も知らない鈴木主任は、突然足を止めた私に気付き、立ち止まり振り返っては首を傾げている。


分かっている。
さっきの言葉になんの深い意味もないって。だからこそ、ストレートに言えるんだって。

分かっているからこそ辛い。……私の気持ち、これっぽっちも伝わっていないことが。


いっそのこと、言ってしまおうか。
鈴木主任のこと好きなので、こういうことを言うの、今後やめて頂けませんか?って。


でないとこれからもずっと続くんでしょ?


そう思えば思うほど胸が締めつけられていく。


いまだに首を傾げ私を見つめる鈴木主任。

その姿に頭をよぎった言葉が喉元まで出かかった瞬間、なぜか鈴木主任は驚き目を見開いた。
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