次期社長の甘い求婚
それなのに神さんは気を良くしたのか、にっこり微笑んじゃっている。


そして呆気にとられている私に気付くと、ますます頬を緩ませた。


「言っただろ? 本気だって。……他の誰かに取られたらたまったもんじゃないからな。牽制しといたまでだ」


けっ、牽制って……。


からかっているだけだと思った。けど、本気なの?


いやそんな信じられないよ。ただの気まぐれじゃないの?



思考回路が停止しそうになる中、頭をよぎるのはもっと深刻な問題。


同僚達に聞かれてしまったということ。


先輩達が神さんを狙っているのは、重々承知している。
なにより大問題なのは……。


引きつる顔でチラッと鈴木主任を見れば、なぜか顔を真っ赤にさせ他の同僚達と「すごいね、小野寺さん」とか「さすが」なんて興奮気味に騒いじゃっている。


間違いなく勘違いされてしまった。


違うのに。私が好きなのはこんな御曹司様じゃなくて鈴木主任なのに……!


神さんの信じがたい言動に、今後のことを考えると真っ暗になってしまい、しばしの間立ち尽くしてしまっていた。
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