レーザービームの王子様
「さってと、私ちょっと出かけてくるね」

「え? 今日は動物園行くんだろ?」



誕生日当日は無理でも、次の日のオフに家族そろってお祝いのお出かけをしようと言い出したのは私だ。

不思議そうに目をまたたかせる旦那さんに、私は手にしているものをどーんと突き出してみせる。



「じゃーん。昨日の試合、録画したやつブルーレイにダビングしたの。お義父さんとお義母さんのとこに置いて来るね!」

「……別にいいのに……」

「だってヒロインで環菜の話してるから、お義父さんたちは絶対観たいと思うもの。環菜連れてくとまた長くなると思うから、ひとりで行ってちょっとお話しておいしいコーヒー堪能したらちゃちゃっと帰って来る!」



尚人くんは渋い表情だけど、お互い意地っ張りな父子は嫁ががんばらなきゃすれ違いっぱなしなんだもん。

というか別に、私だって苦じゃないし。お義父さん私にはやさしいから、いつもおいしいお茶とお菓子出してくれるし。



「……まあ、いいけど。実の息子よりあの家で歓迎されてるからなーすみれは」



ため息を吐きながらも、苦笑する尚人くん。

彼が実家の話をするときこんな表情ができるようになるまで、ずいぶんかかってしまった。


でも、確実に前には進んでいる。お義父さんとの完全な和解まで、もうちょっとなんじゃないかなあ。

そのときは、深町家と久我家のみんなで温泉旅行とか行ってみたい。……うん、楽しみだ。
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