私と彼をつなぐもの。
あの日買ってもらった鍋は今は黒宮さんの部屋にある。


すごく気に入っていたけど、あの鍋を使う事はもう2度とない。

新しく買い直す事もきっとない。

あの鍋を見ただけできっと、思い出すから。


幸せな思い出と共に、切なくて辛いこの気持ちを。



私はカバンからスマホを取り出すと恵梨香に電話をかける。


「……グスッ。も、もしもし恵梨香?」


『七瀬?泣いてるの!?』


「恵梨香、私、やっぱり無理だよー。今回も逃げちゃったぁー。もぅ、やだー」



『七瀬………』


もうおしまいにする。
もう、やめる。
これ以上好きにならない。
これ以上近づかない。
もう料理も作らない。


ただひたすらそればっかり、私は繰り返し恵梨香に宣言していた。









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