来ない春
出会い
「いらっしゃいませ〜。」いつもと変わらぬバイトが始まるはずだった。

そんなに好きじゃないけど、一年と少し付き合っている彼氏もいる。

バイトで疲れて帰っても温かいご飯と温かいお湯がある。

何も悩みなんてなかった。

あの人と出会うまでは。

あんな感情知らなかった。

出会わなければ良かったと後悔した。



大学が終わり夕方17時からはコンビニのアルバイト。

17時になり素手にレジのカウンターの中に入っていた私は反射的に気配を感じて、バックヤードとレジのカウンターに繋がる場所を見た。

すでにその瞬間から、可愛い表情を意識していたのかもしれない。
4年経った今、気付いたことだ。
私は3秒で恋に落ちた。


なんて柔らかい笑顔なんだろう。初めての勤務で、やや緊張した笑顔。これからのバイトでの期待感。そんな気持ちが表情から読み取れた。


20歳。大学生。春奈。
新しくバイトに入ったなら新人から挨拶するはず。

なのに、あの人は挨拶をしなかった。
「初めまして。今日から研修の〇〇です。宜しくお願いします!」みたいに挨拶するんじゃないの?

コンビニの店長が大学一年生の男の子を指導係に任命したらしい。
私には挨拶なし。目が合うこともなし。何故か声が小さくて大学1年生の山田くんも、名前を知らない研修の男の子の声も聞こえない。


でも、二人して笑ってる。

そして、新人くんの笑顔を目で追ってる私!?

挨拶もしないで。何なの。

本気で怒ってはいないけど、モヤモヤしてるわけじゃないけど、どちらかと言えば負の感情で目で追ってたの。
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