毒舌王子に誘惑されて
「う〜ん。全然わかんないです」

正直にそう言った私に佐藤さんは苦笑しながらも答えてくれる。

「典型的な男目線と女目線の違いだよねぇ。特に美織ちゃんはファッション誌にいたから、女目線のプロだしね」

「あぁ、・・」

「ファッション誌と違って、スタイルが綺麗とか美人に見えるとかあんまり重要じゃないんだよ。
いかにエロいか、これが全てね。

ほら、この写真はお腹の肉がちょっとだらしないのが逆にいいの。肉感的に見えるでしょ」

「うーん・・・」

そう言われてみれば、そうなのかも。
たるんでるじゃなくて、肉感的ととらえるのか。

「こっちは表情が素人っぽいのがいいね。 あと、何と言ってもこの下乳ね!!」


シタチチ??


「下乳と横乳の違いがわかんないようじゃ、一人前の週刊誌編集者にはなれないっすよ」

そんなセリフとともに、後ろからポンと肩を叩かれた。

「おー、葉月。 お前はどっちがいいと思う?」

「おはよーございます。 俺は断然こっちの下乳写真ですねっ。
あのカメラマン、わかってますね〜」

葉月君は昨日のことなど忘れたかのように、佐藤さんと楽しそうに笑い合っている。

「やっぱり、そう思うか!?
よし、これでいこう。 早速、ナオの事務所に連絡だな」

二人は朝イチとは思えないテンションで盛り上がっていた。

よくわかんないけど、週刊誌には下乳が重要らしい。



昨日のことを謝りたかったのに、葉月君があんまり普通だからタイミングを逃してしまった。
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