毒舌王子に誘惑されて
「あれ、美織さんいたんですか?」

ボーダーのカットソーに麻のシャツを羽織った葉月君が驚いた顔で私を見る。
何てことのないシンプルな服が彼のスタイルの良さを引き立てていた。


「いたんですかって・・葉月君が来いって言ったから来たんじゃない」

「まぁ、そうですけど・・来てくれないかと思ってたんで。2時間くらいは粘るつもりで飲み物買いに行ってました」

葉月君はそう言って、ペットボトルのお茶を見せた。

「貴重な休みに、2時間も待つ気だったの!?」

仕事してる時は超合理主義っぽいのに、プライベートは全然違うのかな・・
葉月君という人が私にはさっぱり掴めない。

「真面目な美織さんのおかげで、貴重な2時間が無駄にならなかったですね。
んじゃ、行きますか」

葉月君は子供みたく無邪気な笑顔で、私の手を取った。

「え!? なんで、手を繋ぐのよ・・」

「デートって言ったじゃないですか。
中学生じゃないんだし、手を繋ぐくらい減るもんじゃないでしょ」

「減るわよっ。 よくわかんないけど、減る気がする」

「そんなこと言ってると行き遅れますよ?」
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