恋に目覚めたシンデレラ
対峙

カラオケルームを出たとき滉さんは直ぐ近くで待っていてくれた。矢嶋くんはちょっと離れた所にいて俯いている。



少しは落ち着いたと思ったけど時間が経ってもさっきの矢嶋くんを思い出すとやっぱり怖い。
それでも声をかけたのは先に帰ることで矢嶋くんに幹事を押し付けるような後ろめたさを感じてしまったから。


俯いている様子からさっきのことを悪いと思ってくれてるかもしれない。当分近くに行くのは怖いが今は滉さんも沙織ちゃんもいるから何もしてはこないだろう。

こっちを見ようとしない矢嶋にもう一度声をかけようと近くまで寄ろうとすると、すかさず腰に滉の手が回り力が込められた。

動けない……。

「滉さん?動けないです……」


「そんなに離れてはいないしここからでも声は充分届くと思いますが」


離してはくれないんだ。


「……矢嶋くんあとはお願いね」


そのまま声だけかけるとやっと顔をあげた矢嶋からは短い返事が返って来た。



帰りの車の中、三枝も沙織も無言のままだった。
ピリピリした空気を二人とも感じたのかもしれない。
沙織を降ろした後も滉はずっと無言で外に顔を向けていた。

滉さんはあの場所にいつ来たんだろう。
いつから私たちの話しを聞いていた……?
矢嶋くんの事に関しては滉さんはいつだって敏感に反応する。
きっと不快な思いをさせてしまった。




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