恋に目覚めたシンデレラ

「いいですよ。彼女なら一度顔も合わせてるし……お料理も小野寺さんはプロですから一人増えてもやってくれると思います」

「本当にいいんですか?」

「構いません。小野寺さんの料理も是非食べに来て下さいとその方に伝えて下さい」

「ありがとうございます。沙織ちゃんきっと喜びます」

「一応、俺の方から小野寺さんに話しをしておきますが。詳しい日にちが決まったら早めに言ってください」

「沙織ちゃんに都合の良い日を訊いて後で晃さんに知らせますね」


次の日のお昼休みにOKの返事を貰ったと事を話すと沙織ちゃんは「やったぁ、やっと豪邸が見れる」と小躍りしていた。


はしゃぎすぎかと思わず周りを見たら社員の殆んどは食べ終わったらしく疎らにいるだけで私と沙織ちゃんが食べているテーブルの近くには背中を向けた男性社員が一人スマホを弄っていたから多分大丈夫だろうと思ったら。その男性は振り返った。

「豪邸ってなんの事だよ?」

あまりの沙織ちゃんのはしゃぎように聞こえてしまったようだった。
しかも背中を向けていた男性は矢嶋くんだった。

「……そんな事は……言ってませんけど?豪邸なんて知りませんよ。ねぇ葵さん?」

沙織ちゃん……動揺しすぎ。
矢嶋君に訊かれて私の顔をチラリと見て察したのか知らないと答えたけど態度と言い方が微妙で矢嶋君の目にはきっと怪しく映ったに違いない。



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