私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)

 俺より頭半分ほど背の低い秋は、笑いながら一緒に自転車置き場に向かってる。

 そんな秋の笑顔を見て、俺は安心する。

 こいつは、1回この笑顔を失っているから…。

「瞬、日曜日…さ」

「俺も行くから心配すんな」

 たかが弟の大会を見に行くだけ。

 それだけのはずなのに、秋は心底ほっとしたような息を吐いて、スポーツバックを掴んでいた手は、俺の腕を掴んできゅっと抱きついてきた。

 秋の弟の春馬はなぜか反抗期の対象が親ではなく、姉である秋に向いた。

 だから、家では暴言の嵐らしい。

 そんな春馬に遠慮して、秋は随分肩身狭そうに家では部屋にこもっていることが多い。

 でも、春馬も不器用でバカだからな…。

 素直になれば秋がこんなに怖がることもないのに。

「…大会…行かない方がいいのかな…」

 急に弱気になった秋は、うつむいて顔を上げない。

 行かない方がいいのかなと言いつつも、本当はあまり行きたくなさそうだった。
< 71 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop