(短編集)ベッドサイドストーリー・2
・ブルーポルカドット

・ブルーポルカドット


 雨の日は、少しばかり気分が弾む。

 だって空から水が降ってくるなんて素敵。確かに泣いてるようにも見えるけど、ゆっくりじいっと見てみたらわかるはず。

 水の玉の団体だって。

 それが一番よく判るのは、透明のビニール傘をさしたとき。

 私のお気に入りはちょっとブルーの入った透明傘。そうしたら、傘の内側から真っ青な中に弾む水玉が見られるのだ。

 霧雨では出来ないけれど・・・でも普通の雨ならば、ね。

 普段はわりときっちりフルメイクをしている私は、休日の雨の日にはスッピンででかける。平日だったらそうはいかないけれど、休日だったら出来る。

 それは雨の日に特有の、肌が湿ってちりちりと音をたてるみたいな不快感や、べったり塗ったファンデが崩れるのを心配しなくていいってメリットがあるのだ。湿ってうねる髪の毛だって頭の上でくるくるとまとめちゃえば平気。そんなラフな格好で外へ出るのは、雨の日が最適だ。

 透明な傘は隠れ蓑にはなってくれないけれど、私は傘越しの世界を楽しんでいるのだからそれでいいのだ。

 顔が濡れたって大丈夫。その場で手やハンドタオルでぬぐってしまえる。何事もなかったような顔に、いや、もしかしたらそれ以前よりもすっきりした顔に。

 そもそも私が雨を好きになりつつあった時は、痛い失恋をした頃だった。長い片思いを実らせた後、4ヶ月ほど付き合った彼に、ある晩別れを告げられてしまったのだった。目の前できつくしめられた鉄のドアが瞼の裏でどこまでも私を追いかけてくる、そんな感覚に陥って、数週間暗かった私。



< 23 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop