Memorial School
門は私が通過すると自動で閉まった。つくづくハイテクだ。

ともあれ、私はこの敷地に来いとは言われたけど、敷地内のどこにとは言われていない。そもそも何がどこにあるのか分からない。警備員さんには期待できないし……どうしよう。



まさかこのまま待ちぼうけかと途方に暮れ始めたその時、奥の大きな建物から人の声と複数人の足音が聞こえた。



「もう!!シイがカフェに行こうとか言うから遅れたじゃない!!」

「え、私のせい!?ていうかエイチは!?」

「あいつはどうせどっかで女子を誑かしてるよ。いないのが普通だからいいや。取り敢えず急ごう!!」



………よく見えないけど、ここにいるってことはあの人達はS班のメンバーなんだろう。

私ここでどうしてれば良いのかな……。なんか気まずい。



ここは引き返そうかどうしようかと慌てふためいていると、走ってきたS班の人達が私の前に立ち止まり、こちらを見た。流石、結構な距離だったのにほとんど息切れしてない。



近付くとよく見える。当たり前だけど、やっぱり"あの"S班のメンバーだ。ここの生徒なら全員が確実に知っているその顔触れに感動を覚えていると、S班リーダーのエムさんが口を開いた。



「エスさん……だよね?」

「は、はい。」




「ようこそ、S班へ。」



草木生い茂る夏真っ盛り。

強めに吹いた暖かい風が彼の柔らかい黒髪を揺らす。



それはまるで、始まりの合図のようだった。
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