ある日、パパになりました。

2日目終了…疲れた…ん、なんかデジャヴ

アリスを駅まで送った、その帰り道。空と辺りが綺麗なオレンジ色に染まり、道には二人の影が長々と伸びていた。夕日に照らされている街道の桜を見ながら、綺麗だなぁと思いながら歩いていると、隣の咲が、
「アリスさんって不思議な人ですね」
そうポツリとこぼした。
「不思議な人って(笑)変人とか変わった人って言っていいんだよ。あ、どっちも同じか(笑)」
「あはは・・・ははは・・・」
「まあ、不思議な人に見えたのか、咲には」
「はい、アリスさんって、最初は、何この人って、感じだったんですけど、話してるうちにただ単純に子供が大好きな人なんだなぁってわかってきたから・・・・・・パパやアリスさんみたいな人、初めてです」
途中から目に涙をためながら話す咲を見て、立ち止まり、しゃがんで咲を見つめて、
「咲、泣くことなんかないぞ。俺みたいなヤツはこの世に沢山いるし、アリスは少し特殊だがな。それに咲はこれからの人生でいろんな人と出会って、いろんなことを経験して、世の中を知っていくんだ。その中で、咲に対して嫌なことをしてくる人もいると思うんだよね。でも、反対に手を差し伸べてくれる人が絶対にいるんだ。世の中はそういう風になっていると俺は思ってるんだ。そうじゃないと、世の中のバランスが壊れちゃうからね。それにな、涙は、一生で泣ける量が決まってるからな」
と言いながら咲の頭をなでる。最後の一言を聞いた咲は、
「パパ、涙の量なんて聞いたことないよ」
といって涙を拭きながら笑う。それを見て俺は、
「ハンカチ使う?」
そう言ってポケットから男物のスポーツのメーカーのハンカチを咲に渡す。
拭き終わったのを見て、
「さ、帰ろっか」
と右手を咲に差し出す。咲は、
「うん♪パパ」
といって、その手をとって、2人は歩き出した。
と、頭の中に一つの映像が流れてきた。そこは夕焼けが綺麗な所だった。
「うぇ〜ん。パパ〜グスン・・・」
一人の男の子が父親らしき大人に泣きながら走っていった。
「うん?どうした?」
その男の人はその子を見ると、
「ああ、こけたのか」
そう言われて、男の子は涙を腕で無造作に拭って途切れ途切れに、
「うん・・・すごく痛い・・・グスン」
と、また泣きだそうとしている。
「そうか、それは痛かったな。でもな、そんなことで泣かない方がいいぞ?」
急に真剣な顔になってその男の人は語り始める。
「それはな、人は一生で泣ける涙の量が決まっているんだ。そんなことで泣いていると、将来ほんとに泣きたい時、例えばパパやママが死んだ時に泣けなかったら、嫌だろ?」
「うん・・・・・・グスン」
男の子は涙をまた拭きながら、ポツリと呟く。それを聞いて、男の人はまた話しを続ける。
「だからな、うーん、なんていうだろう。男だから泣くなとは言わないけど、泣きすぎるのも良くないってことかな?うん、だから、本当に悲しい時に思いっきり泣くんだぞ?あれ、これって結局泣くなってことじゃ・・・・・・ま、いっか(笑)」
それを聞いた男の子はなんでパパは笑ってるんだろう?と頭を悩ませている。
「さ、もうそろそろ遅いから帰るぞ。今日の晩御飯はお前の好きなカレーライスらしいぞ?」
カレーライスと聞いた途端に、男の子の顔から涙が消え、代わりに笑顔が生まれた。
「ほんとに!?やった〜!!早く帰ろう、パパ!!」
そう言って、家に向かって駆け出していく。その後ろを、
「そんなに急がなくてもママのカレーは逃げないぞ〜」
笑顔で追いかけていった。

なんだ今の記憶は・・・・・・まさか、俺の記憶?全く覚えてない。でも、どこか懐かしい感じがする。ってことは、あの男性は本当におれの・・・・・・、
「・・・・・・パ・・・・・・パパ!」
はっ、何を考えているんだ俺は。もうそんなの関係ないじゃないか。父親は俺が小学校2年生の時に急にいなくなったんだから、今更、なんで、
「ごめん、ごめん、咲。ちょっと考え事してたんだ。心配させてごめんな」
そう言って、咲の頭をなでる。
「びっくりしました。パパ、急に止まったから・・・・・・」
「もう大丈夫だよ、ちょっと昔のことを思い出しただけだから。さ、帰ろう」
と、急いで歩き出した俺の腕の裾を咲が掴み、止める。
「あ、パパ、今日の晩御飯って、決まってますか?私、ちょっと食べたいものがあるんです・・・・・・」
お、咲からのリクエスト!!とうとうここまで・・・・・・(泣)←まだ2日目(笑)
「いいよ、なんでも言ってごらん。じゃあ、スーパー寄っていこうか」
「えっと、唐揚げというやつを食べてみたいです。今読んでる本で主人公達が食べてて美味しいって書いてあったから・・・・・・」
「うん、任せなさい!パパの得意料理だ!!」
「はい!楽しみです!」
そして、2人は沈む夕日を背にして影を伸ばしながら、家への道を歩いていった。
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