ある日、パパになりました。

妹襲来!どうなる俺・・・・・・

綺麗に磨かれた黒のローファー。そして、奥からは人の気配とシャワーの音。
俺は、まさかとは思いつつも家の中に入り、テーブルを咲と挟んで座り、これからのことについて話そうとした時に、勢いよく俺の後ろの襖が開いた。と、同時に俺の背中に衝撃とふくよかな感触が伝わり、首にはシミ一つない艶のある腕。はぁ・・・・・・やっぱり、お前か。
「お兄ちゃん、帰ってたんだ」
そう言って、俺に後ろから抱きついてきたのは、結城葵(ゆうきあおい)。俺の三つ下の妹だ。
「葵。お前、今日は学校の課題が多過ぎて来れないんじゃなかったのか?」
と、咲が来る前にメールで来れないって言ってきたのに・・・・・・。
「それはね〜お兄ちゃんに会いたくて、早く終わらせて来ちゃった」
と、マンガならハートが付きそうな顔でウインクしてくる血の繋がった妹の葵。
「そうか。じゃあ、ついでに、離れてくれないか?」
いつもならこれくらいなら俺も許すのだが、今は俺の目の前には咲が座っているのだ。ハッキリ言って教育に良くない。だから、今はそういうのは・・・・・・、
「やだ。せっかくお兄ちゃんに会えたんだからイイじゃん、もう少し〜」
と、なかなか離れてくれない、いや、離れない妹を、
「離れろ〜」
と、少し強引に挽きはがす。
「ええーぇ」
と言いながらどこかふざけているような本当に残念そうな顔で離れていく。そして、俺の隣に座る。ふう、やっと静かになったのを確認して、俺は、
「咲が困惑してるからあまりそういう事は自粛してくれ、これからは」
と言うと、
「咲?誰それ?」
と今気付いたように俺が座っている反対の方へ視線を向ける。そして、二人の目が合うと同時に咲が「こんばんは」と軽く会釈する姿を見て固まる葵。
そして、固まって数秒後何とか絞り出すような声で
「ど、どちら様で?」
と言ったと同時に何故かガクりと膝をついて、
「なんで、お兄ちゃん、ロリコンなんかに・・・・・・ノーマルだと思っていたのに・・・・・・」
と、ブツブツと言い始める。いや、待て待て、俺がいつロリコンになった・・・・・・ハッ!咲のことを勘違いしてるのか、葵は。これはすぐに誤解を解かないとな。それに、と咲の方を見ると、「えっと・・・・・・その・・・・・・」と初めて会う葵についていけない様子。しかし何と言ったらいいものか・・・・・・と、考えた末に俺が言った言葉は悪手だった。


「葵、えっと咲はな俺の娘なんだ」


それを聞いた途端に葵の何かが崩れる音がしたような気がした。多分、気のせいじゃないような気がする。俺の娘発言を聞いてフリーズしていた葵がいきなり立ち上がり、玄関に向かって部屋を出ようと横を通り過ぎて行く。そして、その両手には一体どこから出したのかわからないスタンガンとロープが握られている・・・・・・、
「おい、ちょ、待ててって、葵!!そんな物騒なもの持ってどこ行くんだよ!!」
そう言って葵の左腕を掴む。流石にこれは止めないといけない。放って置くと死人が出かねない。
「お兄ちゃん、離してください!!私は私は殺らなければいけない事があるのです!!」
「いやいや、待て待て。今のやるって殺すって書くだろ、お前。とにかく、その物騒なものしまえって!!」
と、説得するが全く効果なく、
「嫌です!!これを使って私は私はお兄ちゃんを誑かした女狐を退治しに行かなければならないのです!」
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