囚われのサンドリヨン ~御曹司様のご寵愛~【番外編を追加しました】
「春まではさ、長年住み込みやってた婆さんがいたから。…まあ、キレイなもんだろ」

どことなく嬉しそうに、彼は床をミシミシと踏み鳴らしている。

確かに。
ギシギシいうのを除けば、つい最近までヒトがいた気配があり、荒れたふうではない。
キレイ好きなヒトだったのだろう。
隅々まで手入れされ、ホコリも積もっていない。

しかしそこはお婆さん。見れば洗面器が床に転がっているではないか。
 
拾おうとすると、

「ああ、置いとけ。そこ、雨漏りするんだ」

「……」

気を取り直して部屋を見回す。

ありがたいことに、私の荷物が既に入れられ、キチンと配置されている。

お気に入りの抱き枕ちゃんも!

嬉し泣きながら頬擦りしていると、驚いたことに、課長は私のベッドにドサリと寝そべった。

「な…」

「しっかりした婆さんだったけど、今年80でな、いよいよいけなくて、施設に入ったんだ」

天井を見つめ、愛しげに語った彼は、これまで見たことのないような優しい顔をした。

しかし私はそれどころでない。
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