若の瞳が桜に染まる
「何故黙る?我久と付き合ってるんだろ?」

疑った目を日和に向ける。辰久は最初から二人が付き合っているなどとは信じていないのだから当然だった。

でもここで嘘がバレてはいけないと、日和も恐怖心を堪えて首を縦に振った。

「そうか。
なら心配ないな。
ここに署名をするんだ」

「署名ってなんだよ。こっちが勝手に拐っておいて、上から日和に署名しろなんて変だよ。
早く解放するべきだ。

日和、署名なんてする必要ない…から……」

我久の抗議を意に介さずに辰久は一枚の紙を取り出して机の上に広げた。
それを見た我久は、思わず絶句してしまった。

「我久、お前にも書いてもらう」

その紙には、夫になる人、妻になる人の欄。

「婚姻…届…?」

一番上に書いてある文字をそのまま読んだ。
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