若の瞳が桜に染まる
「…良いのかよ。
俺と結婚するってことは、天祢組っていう組織の身内になるってことなんだよ?それがどういうことかわかってる?」

「それは、あんまりわかってない…。
だけど、天祢さんは良い人だから」

「良い人…?」

「うん。屋上での作業手伝ってくれた。
それに、天祢さんが悪い人なら、私が天祢さんと関わった時点で花たちは枯れてるだろうから…」

自分の気持ちが上手く掴めない日和にとっては、花たちの反応が一つの感情の指標となっていた。
その花が我久を良い人だと判断したから日和もそう判断したという。

「…日和は俺のこと、怖くないの?」

勇気を振り絞って聞いてみた。

この屋敷に連れてこられて怖い思いをしたことに違いないのに、その場に留まることを決めるなんて我久には理解し難かった。
理由があるとすれば、やはり安全の確保。我久と結婚しなければ命が危なかったから。

そう思うと、我久は自分の存在自体が日和にとって脅しになっているように感じた。
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