クジ引き
1日何も食べていないけれど、さすがに食欲はなかった。


「なにもいらない」


左右に首をふってそう言うと、朝日はまた心配そうな表情を浮かべた。


「じゃぁ、飲み物だけ持ってくるから」


そう言うと、朝日はキッチンへと向かった。


体中が重たくて立ちあがることも億劫だ。


過去の犯罪まで思い出してしまい、あたしは頭を抱えた。


あの時何が起こったのかを理解できたのは、小学4年生くらいになってからだった。


自分のしてしまった事をようやく理解できたあたしだったけれど、やっぱりあの時の事を誰かに話すような事はできなかった。


今までずっと隠してきた。


それなのに……。


どうして今になってそれがバレてしまったんだろう。


もしかして、あの時誰かに見られていたのだろうか?


人通りは少なくて、暗い路地。


人がいたとは思えないけれど、小学校1年生の記憶はおぼろげだ。


自分がしてしまった事実ばかりが鮮明に思い出されて、周囲の様子は霞んでいる。
< 114 / 139 >

この作品をシェア

pagetop