クジ引き
文哉はずっとあの時の事を気にしていたようだ。


「それならいいんだけど……」


文哉はそう言い、頭をかいた。


あたしと文哉の間に沈黙が広がる。


「どうかした?」


お見舞いならこれで用は終わっているはずなのに、文哉は帰ろうとしない。


「実はさ、俺ずっとお前の事が好きでさ……」


小さな声で文哉が言った。


あたしは目を見開いて文哉を見つめる。


「嘘でしょ?」


「本当だよ!! だからさ、お前に彼氏ができたって知って、ちょっとショックでさ。だからあんな事言っちまったんだよ」


ボリボリと頭をかいてそういう文哉。


文哉の顔は真っ赤になってしまっている。


どうやら本当の事みたいだ。


文哉があたしの事をそんなふうに思っていてくれたなんて、思ってもいなかった。


「そうだったんだ……」


「だ、だから。俺の言った事なんて気にするなよ!」


「う、うん。わかった」
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