逆光





気がつけば力一杯彼女を抱きしめていた。

苦しかったであろうに、和泉は黙って受け入れてくれた。
言いたいことはたくさんある。
だけど、頭がぐるぐると熱く、喉からは嗚咽が漏れ、言葉が出なかった。

「いずみ、いずみ」と子供のように、ただ名前を呼んだ。


「ナムトでの活動は、きっと一生かかってもゴールなんて見えません」


ポツリと、和泉は総馬の腕の中でそう言った。
そろりと背中に回された手に頭の後ろが熱くなる。


「でも、総馬さんは走り続ける気でしょう?ゴールは見えないほどに遠い。一人で走り続けるのは辛いから、だから、どうせだったら一緒に行きましょう」


そう言って顔を上げた和泉と目が合う。
心なしか潤んだ目が近づいてきて、なだめるように鼻に、頰にキスされた。

総馬がボタボタ涙をこぼすものだから口に入ったのだろう。
「しょっぱい」と眉を下げて笑う彼女に総馬もたまらず口付ける。







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