逆光





十五通目の翔への手紙は、ナムトから出すことになった。

痛いくらいの日差しと舞い上がる土煙。
人が牛を連れて歩く牧歌的な風景を横目に、和泉はペンを走らせる。


『クロックビーチは遠すぎると総馬さんにも言われたので、最初の旅先はナムトにしました。南国らしい気候で、長袖の出番はしばらくなさそうです』


旅人ではなく、ナムトの住人になるであろうことは書かないでおく。

ナムトにいる、とだけ伝えれば、聡い翔のことだ。
すぐに分かるだろう。

出発前の「やっぱりな」と言いたげな大谷の顔が浮かんだ。



『ここ十年で、私も総馬さんも変わりました。私の決断に私自身が多分一番驚いてます』


ナムトにはミウミウもフェラガモもない。

あるとすれば、パパイヤやマンゴー、それから牛や羊だろうか。

和泉は足先を動かす。
安いゴム製のサンダルはキュッと音を立てた。




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