逆光




その表情を見てたのか、栗色の彼女は不安そうな顔をし、震えた声を出す。


「なんか私まずいこと言った?」

「いえ、別に大丈夫です。」


引き際を知らない男は嫌いだ。

女の不満なんてその時だけの感情の垂れ流しでしかないのに。
いつまでもそれを覚えていられるのはいい気がしない。


和泉が寺田総馬を憎々しく思っていたその時。

「和泉さん、栗原さん」と後ろから声をかけられた。
まさに、今話題になってた男の声で。
和泉は今度こそ隠しもせずに目を細めて寺田総馬を睨みつけた。


「そんなに睨まないでくれよ。声をかけただけだろう。」


困ったように笑いながら寺田総馬が近づいてくる。
拒否反応だして威嚇してるんだから近づいてくんな、と心の中で毒付く。
二人の対称的な反応に隣が戸惑ったのが分かる。

ニコニコと笑う寺田総馬と親の仇のように睨み付ける和泉に挟まれた栗原さんというらしい女子は困ったようにオロオロしだした。


「栗原さんと和泉さんは友達だったのか。」

「えっと、私が和泉さんに声をかけたの。」








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