逆光




和泉はぴくりと自分の顔が引きつるのを感じた。

「や、来たね」と対する大谷はいかにも爽やかに挨拶をする。
そしてその隣にはぶすっとした顔の寺田総馬。

いや、分かっていた。
大谷がただの良い人ではないことは分かっていたし、一筋縄ではいかない性格だというのも知っていた。

だけど、これは。
予想外だった。


キラキラと輝く夜景を背景に、男二人に女一人で食事をする。
うち二人は睨み合い、一人はニコニコと笑い内心何を考えているのか分かったものじゃない。
なんだこの状況は。


和泉は溜息をつきたいのを堪えて、おとなしく椅子に座った。


「二人ともフレンチは嫌いじゃないよね?」


にこやかにそう問う大谷。
なんだろう、今になって大谷がよく分からなくなってきた。
和泉が知る大谷とは、ドライで、極力干渉しない人だ。
自分に利益があると思えば動くが、なければ動かない。

そんな人が、和泉との食事の約束に寺田総馬を呼んだ。
彼を呼ぶことによって大谷に利益があるとすれば、つまり。
大谷は、和泉とは付き合いたくないのだろう。

この事実は和泉にかなりのショックを与えた。
まさか、まさかだ。

完全に大谷は和泉と同調してくれると思っていたのに。

読みが外れたこともショックだが、それ以上に寺田総馬に負けたことが一番嫌だった。
勝ちとか負けとかの話ではないような気がするが、和泉にとって大谷と付き合えるか否かは寺田総馬との勝負のようなものだった。
どっちの考え方が大谷に認めてもらえるか、の。

和泉はなんだかどっと疲れた。
この日のために折角色々考えて新調した服も今では色褪せて見える。
耳元のイヤーカフに付いたパールが放つ光も、今では鈍くなっているだろう。

大谷が話していた本や映画や絵画も色々調べて読んだり見たりしてきたのに。
全部無駄だったのだなぁ、と思うとじわりと泣きそうになった。

もう負けが決まった勝負。
これ以上醜態を晒す前に帰ろうと思った。
何より、失恋でこんなにショックを受けている自分をこれ以上感じたくなかった。





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