それを愛と呼ぶのなら。【完】




「お前、また無理してないか?ちゃんと寝てるか?」




仕事帰りにどうしても飲みに行きたくなって、でもどうしても一人になりたくなくて悟を呼び出した時。

悟は開口一番、そんなことを言った。



いつもと同じようにビールを注文して、二人でグラスを合わせた後、すぐに。

私の顔を覗くようにして、悟は私を見ていた。


その目は、心配の色を浮かべていた。




「大丈夫だって!別に何もないから」


「ほんとにか?」


「ほんと!そんなにいつもと違う?何も変わらな―――」

「違う」




私が言い切る前に、悟は私の言葉を遮った。


私をじっと見つめていた目に、真剣さが滲む。

その目に、そっと笑って見せた。



いつもの笑顔で。

誰にも有無を言わせない表情で。




「お前な、そんな風に笑うなよ」


「何が?いつもと変わらないって言ってるじゃない」


「何でそう強がる?俺はそんなに頼りないか?」


「頼りになるよ。いつもサトに助けられてる」


「じゃあ、言え。何があった?」


「何も」




押し問答なのはわかっているけれど、自分がもやもやしている理由なんて言えるわけがなかった。

だから、このまま何も言わずにいよう、と決めていた。




「お前、人が心配してるのに…マジでちゃんと言えって。全部聞いてやるから」


「ありがと。そう言ってもらえるだけで嬉しい。サトのそういうとこ、ほんとに好き」




自然と口から出た私の言葉に、悟は目を見開いて目を逸らした。

そんな悟を見て、私はクスクスと笑っていた。

もちろん、私だけでなくカズさんを含めたスタッフ全員が笑っていた。




「サックーン、照れちゃったの?はじゅかちいでちゅね~」


「いや、ほんとカズさん最低。ふざけんなって。暁、お前も!マジ、そういうのやめろ!」


「やめなーい。だって、サトってばすぐ照れて可愛いんだもん」



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