それを愛と呼ぶのなら。【完】




私は、気付いてしまったんだ。

いや、本当はずっと前から気付いていたんだ。



でも、それを認めたくなくて。

認めてはいけないことだとわかっていたから、気付かないフリを決め込んでいた。




それもどうやら限界みたいだ。

もう、気付かないフリなんて出来なくなっていた。




悟がくれる言葉に。

悟がくれる表情に。

悟がくれる優しさに。









私はとっくに。

悟に恋をしていたのだ。









涼ちゃんが好きなことに変わりはないのに。

傍にいる悟のことを、今は涼ちゃんよりも身近に感じる。





気付けば、逢いたいと想っていた。

傍にいたいと、想っていた。




悟の『好き』は、恋愛の『好き』じゃないことは、私が一番わかっていた。

まして、涼ちゃんという『彼氏』がいるということで、私は悟の恋愛対象ではない。



だから、こんなに一緒にいられるということも知っている。

お互いを尊重できて、大切に出来る。



本当に大切な『友達』でいられる。



いつも一緒にいても、それは友達だから許されて。

抱き締められても、それは友達だから出来ることで。

私の放つ『好き』は、『友情の好き』だから笑って受け取ってもらえるのだと知っている。





だから、悟に『好きだ』と言える。

冗談交じりで伝える『好き』の中に、本物の『好き』を上手隠して伝えていたとしても。



気付かれない限りは、私の小さな『好き』を届けることが出来るから。







でも、これはイケナイコトだ。

涼ちゃんを裏切ることだ。





涼ちゃんを裏切る。





それが出来ないなら。

この気持ちは、しっかりと蓋をして、二度と開けてはいけない。







気付かなければ、よかった。

見てみぬフリを、すればよかった。



そうすれば、今まで通りでいられたのに。



気付いてしまった今となっては。

もう、遅すぎるということもわかっていた。



< 25 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop