イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
仕方なく出ることにしたらしく、零士さんはまだ鳴り続けるスマホを取り出す。いつまでも暗いままではいけないと、私はスイッチに手を伸ばし、玄関の電気をつけた。

明るくなったそこに、落としたままのバッグとお互いの姿が露わになり、急に恥ずかしさが舞い戻ってくる。

どうしよう。私、零士さんとあんなに濃厚なキスを……! しかも、あのままだったら絶対もっと先のコトにまで及んでいたはずだし……!

まだ唇には生々しい感触が残っていて、無意識に口元に手をあてた。


「何だ、今取り込み中…………え?」


電話に出た零士さんは、最初こそ不機嫌さを露わにしていたものの、急に声色が変わった。

仕事の用件かと思ったけれど、よく考えれば今日は忘年会。会社の人ならおそらく仕事の電話はかけてこないだろうし、この話し方からすると取引先でもないだろう。

とすると、家族かな?と気になってしまい、密かに耳を澄ませてみる。


しかし、聞かなければよかったと、すぐに後悔した。電話の向こうからかすかに漏れ聞こえてきたのは、明らかに女性の声だったから。

もしかして、元カノ……?

夢心地だった心が、次第にギシギシと強張っていくのを感じる。黒い感情が沸き上がる私をよそに、零士さんは迷いもせずこう言った。


「……わかった。今行く」

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